絵画部、秋の合宿
11月1日から1泊2日で職場の絵画部の仲間たち11名と、千葉県銚子市の犬吠崎へ行ってきた。
犬吠埼は、私の母方の祖父が絵を描くためによく足を運んだ場所だそうだ。
故人を偲んでその話を聞く度、犬吠埼に頻繁に絵を描くどんな理由があるのだろうと気になっていたのだが、都合良く秋の合宿の幹事をすることになった私が犬吠埼を絵画部の合宿の地としたのであった。
犬吠崎へは都内から150km程度。車で片道3時間弱。首都高から東間道を通って向かった。
宿は、ネットで探してみつけた、民宿「文治」。温泉はないが、一泊2食付きで6800円と安かった。目の前には外川漁港が見える。
近くの定食屋「見晴」で昼食をとって満腹になったところで、それぞれ、思い思いの場所を見つけてちらばった。
皆の行く先は、民宿の目の前にある外川漁港、銚子電鉄の末端である外川駅、犬吠崎灯台と好みが分かれた。
私は、祖父が描いたという、灯台が入る構図を探して歩いた。
快晴で、海風にススキが揺れる海岸沿いの道を犬吠崎灯台に向けて2kmほど歩き、長崎鼻の灯台が見える砂浜に下りた。 手前の岩礁には釣り人、奥に灯台が見えた景色を描こうと決めた。
印象派の巨匠たちは、伝統に反し、屋外で完成まで到達させるつもりで描いていたそうだ。
そのためには大変な技術がいることだと思う。
今回はそのように描いてみようと試みたが、とても完成まで到達することはできなかった。
ここでは、1時間くらい描いた。
さらに犬吠崎の灯台が左に見る構図に移動するため、砂浜を歩いた。
砂浜にはごみが多く散乱していたが、波に角を削られた石が、砂に埋もれているのは美しかった。
砂に足をとられながら20分ほど歩いて灯台が入る景色を手帳にスケッチした。
その後、君ヶ浜の無料駐車場に車をとめて犬吠崎を右に見てスケッチ。
スケッチのほうが油彩や写真よりも純粋だ。
君ヶ浜はちょっとした公園として整備されていて歩きやすく、すごしやすかった。
ここから犬吠崎灯台へは歩いていける。せっかくだから灯台を観光していこうと思ったら、終わってた。
この日の描画はこれで終わり。集合時間が迫ったので、民宿へ帰った。
夕飯は、千葉で採れた旬の野菜と魚。 今晩の料理で採れないのはみかんだけです。と宿の気さくなご主人から解説があった。美味しかった。豊かな土地だ。
夕食後は、合宿恒例の講評会。
今日描いた未完成の絵を並べて、構図がわるい、色があってない、デッサンがおかしい、等と皆でよってたかって、言いたいことをいう。
描いた本人が完成と認めていないものを講評しても仕方がないのだが、要は酒を飲みながら、陽気に絵の話をしたいだけだ。
合宿二日目、6時におきて朝の港をスケッチした。
金色に輝くちぎれ雲の下、漁船が停泊する港を見下ろす家々に人間の生活を感じた。
朝食は焼いた秋刀魚とか。うまかった。
朝食後、チェックアウト。
皆、荷物をまとめて、正午まで思い思いの場所で描く。
私は、朝スケッチしたものを油彩で描きはじめた。
なかなかよく描き進んだが、寒くて手が痛くなり、テレピンの下描きだけで止めた。
ここで得た着想を仕上げまで持っていければいいが、いつも難しい。
銚子電鉄外川駅でぬれ煎餅と資料館でさんまの煮付けを買って帰ってきた。
犬吠埼がある外川は、町並みは昔に比べ古い家屋が少なくなったそうだが、銚子電鉄外川駅の駅舎をはじめ、まだまだ風情が残る町だ。都心から日帰りできる距離にあり、町並み、漁港、灯台等の画題が選べることに加え、安い民宿が多くある。海の幸も山の幸もおいしく、温泉にも入れる宿やホテルも揃っている。
私は、グルメで温泉好きな祖父が絵を描くために頻繁に犬吠埼に足を運んだのは、銚子のおいしい料理に舌鼓をうち、温泉に入ってゆったりするのを楽しみにしていたからではないかと想像した。
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